前記事の続きだけど
文字数満で途中で終わってる解説小説
#残り2500文字でどこまで書けるか #中三の時に駅で浮かんできた話
#割と鬱
豪雨だった。
「コナタ、掘っても無駄だ」
戦闘で亡くなった人を蘇生させるには、体が必要だった。
「解ってるだろ、分子レベルで消滅したんだ...」
こんな声かけは、しない方がいいのは解っている。
鉾を投げ捨てた妹の叫び声が豪雨に搔き消された。
#お布団で視る夢
柔らかくて、
時として暑すぎるくらいの熱を持っている生き物がいる。
人間の子どもだ。
不死の神族は代謝機能がコントロールされているので、
基礎体温が低い傾向にある。
人の子は、熱くて柔らかくて脆い。
よくこんな脆い殻で生きていけるものだなと
中央皇帝国の将軍は感心していた。
普通、城内の人間だったら彼女に馴れ馴れしくしないし
一目置いて、へりくだってくれるのが常だった。
それなのにこの子は、一緒に寝たい時に部屋に飛んできて
布団に潜り込む。ネコ科の動物に似ているな、と思った。
彼女の親は、村が壊滅して行方不明だし、恐らくは量子魔法で跡形もなく...。
考えると憂鬱だった。カイル王が斃れてからも、戦争は終わらなかった。
こんなに小さくても、
彼女は有能な魔法使いで戦線から外せないのも頭痛の種だった。
遊ぶ約束をしているが、果たせていない。
あどけない寝顔をつつこうとしたら、
大きく寝返りを打った少女の足に腹部をしたたか打たれる将軍だった。
誰かの一撃を食らったのは久しぶりで、柄にもなくドキドキした。
#冬の駅待合室
すっごい田舎の冬の駅なんて、来ても面白い事は何もなかった。
まだスマホもない時代で、駅の待合には石油ストーブが置かれているだけで
駅の売店も夕方には閉まるし、コンビニもない時代だった。
せめてもの救いは、駅前の八百屋さんがぽつりと店を開けていたことで
果物が食べたかったから、柑橘類を中心に買ってきて、それなのに手を付けないで
誰もいない待合室で、次の電車を待っていた。電車の到着にあと一時間半かかる。
防寒はしっかりしてきたけれど、それでも暖房はいきわたっていなくて、石油の匂いに
気持ち悪くなった。
本来だったら、ここは夏に海水浴客でにぎわう駅であって
冬に来るにはかなりタイミングが悪い場所だった。
実際、浜辺は大荒れだったし、
産卵で力尽きた鮭が、玉砂利の砂浜にたくさん打ち上げられていて、
強風と鈍色の雲と荒れ狂う冬の海と相まって荒涼然としていた。
でもこの殺伐とした風景は嫌いじゃないなと思った。
大昔の戦争時代を思い出す。今でこそ簡略化された国境の戦争に比べたら
皆生き生きしていて、尚且つ儚くて、やることがたくさんあった。
頭が暇なのは良くないな、と、紙袋を横の席に置いて
カバンの中の本を探そうとしたら、雪で濡れたのか、紙袋が裂けて
中の商品が転がり落ちた。
小さめの手提げを折りたたんで持ち歩いてたが
早めに入れて於けばよかった。拾おうとして腰をかがめようとしたら、
下腹部が小さく痛んで拾うのを躊躇した。
幾ばくか、寒い場所にいすぎたかもしれない。
自然と顔が蒼ざめた。
一瞬駅が揺れて、特急列車が駆け抜けていった。
後続の電車が遅れて入ってきた。逆方向からの電車だった。
降りる乗客が待合に来るかもと思い、急いで落ちた果物を拾おうとしたが
巧く拾えなかった。
気が付かないうちに、指先がだいぶかじかんでいたらしい。
もう一度立ち上がって、小さな石油ストーブの火の前で手をこすって
指のこわばりが解けるのを待った。
#北へ向かう理由
「彼はゲートキーパーだから、そうだな...」
久しぶりに水鏡に映った兄と会話した。
「あり得ないことではないと思うけれど」
特殊能力の強い人間の種族には、
元々は神族の遺伝子が埋め込まれている事が多かった。
寿命だけがコントロールされていて、短い。
「彼を頼れないなら、
その国だったら北の方にしかいないな、門番は」
僕からも使いを出すよ。北の駅のどこかで落ち合ってほしい。
#半径3メートル
比較的平和な空気が続いていた四月、
中央国の城の一室では、皇女と軍師と将軍と騎士団顧問が油を売っていた。
「へえ、それは同じ男として興味深いね」
暇だったので瀟洒な飾りのついた小刀で、林檎の皮をむきながら軍師が言った。
「なんでそんなことをする必要があるのか、理解できないんだよな」
窓辺で頬杖をつきながら、将軍が眉をしかめた。
「距離を取れというのであれば、お前の殺気が原因ではないのか?」
色恋に疎い騎士団顧問が、同じように眉をしかめて、当然の如くアドバイスした。
「僕が、彼の気持ちを占ってあげようか?」
「お前、占いなんてできたっけ?いやな予感しかしない...」
兄の突然の申し出に、不信感を露わにする将軍だった。
それまで無言だった、人間の皇女が漸く口を開いた。
「教えてあげてもいいけど、公開リーディングになるよ。
プライバシーとかないけどいい?」
三人は顔を見合わせた。
そういえば、うちの第二皇女は、先読みの姫巫女だった。
#鉄道といえば
昔はどの駅の売店にも乗車中の暇つぶしの小説と
分厚い時刻表が置かれていて
新聞や週刊誌も人気だったけれど、
鉄道系の時刻差を利用した推理小説が特に売れていた。
就職難だったころに、繋ぎで駅でバイトをしたことがあるし、
帰りの電車内で、客が待合の席に棄てていった本を
読むことはあったけれど、
まさか自分が時刻表とにらめっこすることになるなんて。
駅を移動するたびに、荷物がかさばっていったけれど
不要なものはちゃんと駅のごみ箱に捨てて調整した。
なんだかまるで、スパイになった気分だった。
北の路線は住んでいる都会よりも恐ろしく電車の本数が少なくて
時刻表を見てほっとした。何度も確認した。
どこかの駅の待合で、逢うべく人に会えるかもしれない。
しかし、北に近づくにつれて、焦りが増した。
冬という時期も重なって、電車が幾度となく遅れ、ダイヤが大幅に狂った。
在来線というものは、強風となるとすぐに止まることを知らなかった。
新幹線は悪天候でも動くのに。
こんなにたくさん降る雪も初めて見た。
乗り継ぎの際に買った駅弁は三色に分かれていて、雪だるまの容器に入っていた。
(可愛いけど、水じゃなくて温かいお茶を買えばよかったな)
電車が長時間止まる度に、停車駅に降りてみたが、どの駅も閑散としていた。
(文字数満)
続きはブログに書いておこう
#謀られた
また電車が止まるとかで、諦め半分、
構内の自販機から温かいお茶を買う目的で電車を降りた。
この頃はまだペットボトル容器がなかったから
お茶の缶が相当熱い。
でも今は暖を取るのが先決だった。
電車内のむわっとした暖房の熱や、
乗客の醸し出す様々な匂いにあてられていた。
降りたとたんに、新鮮な空気の代わりに
猛吹雪が彼を襲った。
(あ、やばい、コンクリ床が凍ってる...!!!)
ホームに降りた瞬間に、足を取られそうになった。
雪国の人って言うのは、
こんな凍結した地面をたやすく歩けるのか...
駅のホームから、凍結のせいで滑って、転落する人とかいないのかな?
彼は感心や心配をしていたが、
実は電車よりも車が移動手段の土地であることを
知らなかった。
早めに電車に戻ることにして
自販機のボタンを押したら
冷凍庫の氷みたいでぞっとした。
白い息。白い雪。真っ暗な線路の外。
電車が来ているのに、誰もいないホームは
すっかり日が落ちて、
電灯の薄暗い灯とボタン雪のコントラストしかなかった。
(しかも、電車の扉、自動じゃないし...)
停車中の電車には現在のように開閉ボタンが無くて
手動だった。
「ねえ、今すぐ荷物を取りに戻って電車を降りて!」
ギョッとした。
誰もいないのに直接頭の中に声が聴こえてきた。
#謀られた2
実際、顔をあわせたら、ものすごく綺麗な顔で睨まれた。
怒っていても綺麗な人だなと自然と相好が緩んでいた。
「ごめん、今日は国政会議が忙しくて、ナビゲートが遅れてしまった」
頭の中に声を掛けてくれたのは
彼が時折里帰りしている皇帝国の姫君だった。
後に国の女皇帝になる人物である。
しかし、皆、皇帝とは呼ばず、
女王と呼ぶのが常だった。
「君さ、ゲートキーパーなのにそっちの世界では物理で移動するの?」
先読みの姫巫女は不思議そうに彼に問うた。
急いで電車に戻り、荷物を纏めて立ち上がった。
(ええと、恐縮ですサラ姫。こちらでは使えないんです。物理法則が違いすぎるので)
思わず声に出して答えそうになったが堪えた。
「急いで。電車が動きそうだ」
駅の改札は閉まっていて、
駅員室のガラス窓をノックして、紙の切符を手渡した。
「まだ区間残ってるけど、いいのお?」
国鉄の職員とは思えないほど、くだけた口調で聞かれて驚いた。
(田舎って、緩いんだな)
大丈夫です!と持ち前の営業スマイルで改札を潜り抜けた。
#謀られた3
「使いってお前か?兄に謀られた」
目の前の人は至極不機嫌だった。
何故ここにいるのが解ったと聞かれて
北に向かうだろうからと思って。
母から聞いたゲートキーパーの人に電話したんです。
まだ来ていないって言われたので
電車で移動しているだろうと思って
一駅ずつ確認しました。
「でも、軍師からは、俺、何も言われていないです」
「なぜ私がこの移動手段を使うのが解った?」
「あなたが電車に乗るの、好きだからです」
また睨まれたが、あまり気にならなかった。
#サラ皇女の公開リーディング
「えっうっそだろw」
当の本人が一番信じていなかった。
「いやそうか、それなら納得だね」
彼女の双子の兄は、納得いった顔で頷いてから首を傾げた。
「でも僕だったらそんな据え膳逃さない!!!ありえない!!!」
すかさず後頭部を、騎士団顧問に、銀のお盆で殴られる軍師だった。
「痛い!!君、暴力的すぎる!!!そんなとこも好き!!!」
涙目で振り向く軍師に鼻を鳴らし、華麗に無視する騎士団顧問だった。
林檎を食べながらサラ皇女が言った。
「ぼくのことも、ミラちゃんって子に似てるっていってたけどさ(もぐもぐ」
確かに名前も似てるよ。
でもぼく、ミラちゃんじゃないみたい。
ぼくは別な魂だよきっと。
本物がそこにいて、
君の事好きなら、
お姉ちゃんと妹ごっこを卒業すればいいんじゃないか?
このアドバイスには、一寸の間言葉を失う将軍だった。
#現実世界書記官の悩み
この世界のひな型を作ったのは小学生の頃で
ちゃんと書きだしたのは、創作仲間が集まっていた中学生時代だった。
当時は漫画家になりたいなーとか、小説書くのも好きだから
どっちでもいいけど
って思っていた。
でも、
創作ってすっごいエネルギー使うんだよなあ。
疲れるし、絵はちゃんと描こうとすると大変だし、
小説は言い回しが他の小説パクりになるのは厭だし
あのたけぼうきさんとか、なんかうちと真逆路線で
同じような話を書かれているんだよな。
真似したと思われるのも嫌だし
既に世に出ている創作に席を譲ろうと思う。
じゃあ創作は趣味でいいか、
サイトかどこかで発表すれば
一生続けられる趣味にもなるだろうし。
ああ、でも。
でも。
私は結婚も恋愛もまだの人間で、
できればギャグ創作の方が好きだし
こんなに生々しい人間関係のことや
性愛が絡む話は書きたくないな。
でも、浮かんでくるのがそういった話ばかりで
正直困惑している。
皆プロットとは外れたことを話すし
外に作品として押し出すととんでもなく
激しい表現や心理描写が多くなる。
でも書かないとずっと脳裏に映像が浮かぶ。
困ったな、私にとっての創作ってある意味
地獄の蓋をあけるようなものだ。
手綱を取らないと。
同じ単語が浮かんでくるのも不思議だし、
もう最初から頭の中に決まった話があるみたい。
「彼方より此方へ」
「四大元素の言葉」
「大水害とやり直し」
「神とは」
今日もメモが増えた。
(学生時代に考えていたこと・完)
続く
#この人たちどうやって
その後も、ちょくちょく顔をあわせる機会はあったが
逆にぎこちない雰囲気が続いた。
「それで君さ、結婚は決まっていて、
あとは神性を棄てて人間になるだけだったじゃないか」
双子の兄の呆れ顔に、妹は睨み返した。
「ガーネがいないから言うけど、
僕なんて数多の人間女性と関係を持っても
こんな事起きた試しがないよ」
「お前な、それ、ガーネにバレてるぞ」
「そうだと思ったよ!」
何故か照れくさそうに頭を抱える軍師だった。
「僕の浮気に興味を持ってもらえてほんと嬉しい...」
これで浮気を辞めたら完璧すぎる軍師だった。
「でも彼、ちゃんと送り届けてくれたじゃないか。
いい奴だと思うけれど?
くだらない痴話げんかで縁をつぶすのか?」
兄にそう言われて、何故か頭痛がした。
「まだ許せない」
#ありえない話
実際、彼とは結婚する気でいたし、向こうの世界の式場もおさえていた。
何しろあっちの世界の常識が解らないから、
常に彼に頼らないといけなかったし
付き合いだしてからは、彼が昔の知り合いかどうかなんてことも
どうでもよくなっていた。
きっかけはそれだとしても
もう全く別の人間で、別の性別で、別の個性を
彼が持っていたからだった。
結婚式の期日を決めて、招待状を作ろうかという話になった頃、
その変化は急速に訪れた。
元々、神族は感情の起伏が乏しくて
一直線な性格をしていることが多い。
それなのに、急に涙が出たりするようになった。
元々食事もとらなくていい種族だったのに
何故か食べたいものが増えた。
先にこっちに嫁いでいるナナカ皇女に
電話で相談したら
マリッジブルーじゃないの?
とコロコロ笑われたあとに、
彼女が黙った。
指示に従って、出た結果を婚約者に伝えたら
返ってきたのは、喜びの言葉ではなかった。
「あり得ないと思います。今の状況だったら」
わたしを疑うのか?
といった後の記憶が曖昧だった。
#身から出た
「でもさあ、君、疑われても仕方ないよ」
双子の兄は言いにくそうに言った。
「なんで?」
「だって君、彼より相当長く生きてるし、
色んな伝説で武勇伝を残しているじゃないか」
「他に寝る相手がいたなんて思われたのは心外だった」
「僕たちなんか、人間からしたらゴシップの塊でしかないんだからさ」
「捏造もいいところだ」
軍師はなるべく、
マタニティーブルーで気が立っている妹を刺激しないように続けた。
「あのミラちゃんの時だってさ、君、気づかなかったじゃないか。
魔導士連盟の女の子たちから君はすっごい支持を受けていた。
僕とかが君の中から声を掛けても、
直ぐに君じゃないってバレて何度か怒られていたし
そんな君のお気に入りの保育園児には
相当な嫉妬の目が向けられたじゃないか」
「ミラに関しては、そういった類の感情はもったことないぞ?」
一寸切れる手前といった口調だった。
「そうだね。彼女が君に懐いて、君は面倒みてたってことだよね...」
軍師はこれ以上言葉を続けられなかった。
自分の本当の感情に鈍いとこうなる。
拗れやすくなる。
(彼女が髪飾りを残して消滅した時、
あんなに取り乱したじゃないか。
それだけ大事だったって事じゃないのかい?)
# 夕ご飯できたから次の話かこ
再会は意外と早かったが、
雰囲気は最悪だった。
つい一週間くらい前までは
夕ご飯の話で盛り上がっていたはずだった。
面通りをと言われて断ろうと思ったが、辞めた。
「今日は所用があって来ただけです。
これからあっちで商談があるので直ぐ帰らないといけませんし、
わたすものがあってきました」
彼は大きめの袋を抱えていた。
なんなら箱もあった。
「こっちよりは使い勝手がいいと思うんです。
活用してください」
「必要ない」
「解りました。置いていきます」
「他にいう事はないのか...?」
踵を返して部屋を出ようとした彼に声を掛けていた。
思わず口を抑えた。
「謝罪なら一度したはずです。
ありえないと思ったからありえないと言ってしまったのは
俺の失言です。
でも...」
俺にも思うところがあります。
俺はあなたに守ってもらうつもりなんてありませんし
家族になっても変わらずあなたを守ろうと思っていました。
でも家族って、ちゃんと建設的な話ができなかったら
喧嘩続きで、
地獄のような家庭になってしまうと思う。
あのときの貴女は
冷静さを欠いていて攻撃的でした。
俺の話なんて聞いてくれませんでしたよね?
そういう人とは一緒になれませんし、
結婚前に解ってよかったです。
でも俺は、貴女の欠点もほんとは愛せます。
でも、
子どもができた女性の気持ちや
心境の変化なんて
俺、男だから理解できませんし、
神族のように体を交換して
代わってもあげられません。
子どもだって俺たちの子だと思います。
でも、これでいいのかって思ったんです。
あなたの不死の神性を奪ってまで
俺の妻になってもらっていいんでしょうか?
貴女は強い人だから...
このまま不死の神性の子どもと
幸せに暮らせます。
俺が居なくても。
だから、結婚の話はなかったことにしてもらって結構です。
言い切ると、彼は顔を拭うと、
扉のドアノブに手をかけて外に出ようとした。
「なんで」
引き留めろよ
といった後に、彼女は泣き出した。
#フライドポテトできたから続きかく
何かあったら中に変装して入ろうかなと
扉の脇で声を潜めて相談していた軍師と騎士団顧問と第二皇女だった。
しかし、用意した鼻眼鏡は必要なかったらしい。
「ねえ、カナタ。ぼくたち、デバガメみたいになりそうだから
撤退しない?」
第二皇女が鼻眼鏡をかけたり外したりしながら、軍師に囁いた。
扉の中からは、
貴女なんて俺がいないとすぐ迷子になる癖に!
だの、
本だってフリガナつけないとまだ読めないじゃないですか!
だの、
泣いている将軍と涙声で語り掛ける、彼の声しか聞こえなかった。
「ぼく、泣いてるコナタなんて初めてで、動揺してるよ」
「中に入って実際に目にしてみたくはないか?!」
何故か騎士団顧問だけが乗り気だった。
「正直こんなくだらない事で喧嘩できる二人が羨ましいよ...」
軍師は苦渋に満ちた表情で髪をかき上げ、
騎士団顧問を見つめたが、さっくり目をそらされた。
代わりに彼女が話し出した内容は、彼を驚愕させた。
「子供ができるとな、特に女性は取り乱しがちなものだ」
「え、ガーネ、君っ、他の男の子を生んだことがあるの!?」
すかざず平手打ちを食らう軍師だった。
かろうじて、床に倒れるのを堪えた。
「ちょっとちょっとお...」
余りの暴力沙汰に、サラ皇女が手で顔をおおった。
「昔、戦地で子供を産む人を手伝った事がある。
移動の際は集団での旅になるだろう?
警護のついでに、医療班の看護師に紛れて
看護職もやっていたな」
「えっ!?ナース姿の君だなんて。結婚したらやってくれない!?」
次は平手打ちをかろうじて躱す軍師だった。
因みにこの世界の看護職は、
ふんわりとしたおおきな綿の帽子と
メイド服のようなデザインの、
白を基調とした制服を身に着けるのが常で
一部の男性に人気が高い職業服だった。
下履きの上に身に着ける丸い形のドロワーズも
ナース人気の要因のひとつだった。
#オマケのオマケ
なっちゃん久しぶりだな編
幸いなことに親族として妹の結婚式に出席しても
見た目はまんま人間なので
余裕で周囲の視線を楽しむことができる軍師だった。
(でもこの世界の女の子たち、ちょっと
お化粧と香水が濃いかな...
折角素材がいいのに勿体ない。
こう...素肌感が透けて見える、
素材を生かした化粧の人が僕の好みなんだよね。
化粧を濃くするならもっと濃い方が好きだ
ばっちり口紅は深紅!!とかさ...
アイシャドウきつめとかさ)
さて、問題はここからだった。
軍師自体は、こっちの世界に足を踏み入れたことはなかったので
予習はしてきたが、
妹の結婚相手の親族については未知だった。
「あらあらあら、お兄様なの?初めましてえ」
お酌に来てくれた義弟の母親の顔を見た瞬間、
笑顔で固まる軍師だった。
「す、すみません、海外勤務で忙しく、ご挨拶にも、伺えず...!!!!」
彼女に目が釘付けだった。
短く切りそろえられた漆黒の髪、
大きくて猫を思わせる漆黒の瞳、
真っ赤な口紅。
着ている着物と彼女の容姿のコントラストがすさまじく良かった。
いや、ていうか。
「な、ナツ…!!!!!」
「あらいやだ、困るわ。誰かとお間違えになられたのかしら?
それに、私と同じ名前の人だなんて、運命かしら?」
にっこり彼女は笑ったが、目は笑っていなかった。
記憶が確かなら、
記憶が確かなら、
彼女は人間ではない。
全てのゲートキーパーの始祖だった。
そして彼女の夫も、そうだ。
「いやあ、可愛い娘ができまして!カッコいい息子もできるんですかな!!?」
ナツの後ろから、
ガタイのいい屈強な男性が現れた。
紋付がはちきれそうな筋肉だった。
慌てて目をそらす軍師だった。
「ま、ま、お兄さんも一杯」
顔をそむける軍師のグラスに並々とビールを注ぐ妹の義父だった。
「次、うちのワイフを口説いたら。この話はやめときましょか。ははは!」
ハハハの部分だけ矢鱈豪快だった。
周囲からは、親族同士の和やかな会合に視えただろう。
「ど、どういうことなんだ、ナツ」
柄にもなく、冷や汗をかきながらビールを飲み干した。
「あらいやだ、困るわ」
可愛らしく頬に手を当てて首を傾げる妹の義母だった。
「まあ、妻とこっちに渡りまして。建設業で食ってますわ。
なかなか子供が出来ない上に、
時間が経ってこっちに適合したら、
生まれてきた一人息子は、人間同然の寿命でしたけど。
もうけもんでしたわ。
何しろ、可愛い娘さんを連れてきてくれましたからなw
孫付きで」
頬の傍に手を寄せ、笑顔で軍師の耳元で囁く妹の義父だった。
軍師は笑顔を崩さなかったが少し絶望していた。
子どもの時の初恋の人も、
妹も、
この男とその家族に取られた気がしていた。
大丈夫です、妹さんのことは大事にしますから。
家族全員で。
その言葉を耳にした時、
軍師は感動や感謝とは別な意味で泣いていた。
周囲からは、妹想いの兄だと取られたことだろう。
(完)

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